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労働基準法は、労働者であれば、事業の種類や規模、正社員、アルバイト、パート、嘱託社員など名称を問わず、労働者を使用するすべての事業所において適用されます。例外として、同居の親族のみを使用する事業所および家事使用人(家政婦)については適用されません。国家公務員、地方公務員、および船員については全部または一部が適用されません。
表に示す内容について、明示する必要があります。
明示すべき労働条件 | 明示方法 | |
契約期間 | 労働契約の期間に関する事項 | 書面交付 |
契約更新の基準 | 契約の定めのある労働契約(有期労働契約)を更新する場合の基準 | |
就業の業務・場所 | 就業の場所・従業すべき業務に関する事項 | |
労働時間関係 |
①始業および終業の時刻 ②所定労働時間を超える労働の有無 ③休憩時間 ④休日 ⑤休暇 ⑥交代制労働における就業時転換に関する事項 |
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退職関係 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む。) | |
賃金関係 |
①賃金の決定・計算方法 ②賃金の支払方法 ③賃金の締切及び支払の時期 |
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④昇給に関する事項 ⑤退職手当に関する事項 ⑥退職手当を除く臨時に支払われる賃金等、賞与および最低賃金額に関する事項 |
口頭でも可 |
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その他 |
①労働者の食費、作業用品等の負担に関する事項 ②安全・衛生に関する事項 ③職業訓練に関する事項 ④災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項 ⑤表彰・制裁に関する事項 ⑥休職に関する事項 |
契約期間は、原則として最長3年です。例外として、以下の場合は最長5年になります。
① 専門的知識等を有する労働者と契約する場合
② 満60歳以上の労働者と契約する場合
また、建設工事など一定の事業の完了に必要な場合は、その完了までに必要な期間とすることもできます。
平均賃金は、解雇予告手当、年次有給休暇中の賃金等の計算に用いられます。計算式は、以下のようになります。
平均賃金=3か月間の賃金総額÷3か月間の総日数(暦日数) |
平均賃金の計算にあたっては、次の期間中の期間および賃金は計算から除かれます。
算定期間から 控除される期間と賃金 |
①業務上の負傷または疾病のための休業期間 ②産前産後休業期間 ③使用者の責任による休業期間 ④育児・介護休業期間 ⑤試用期間 |
賃金総額に 算入されない賃金 |
①臨時に支払われた賃金 ②賞与など3か月を超える期間ごとに支払う賃金 ③現物支給のうち厚生労働省令または労働協約で定めたもの |
賃金の支払方法については、5つの原則が定められています
① 通貨払いの原則
賃金は、以下の例外を除いて通貨(紙幣・硬貨)で支払う必要があります。
Ⅰ.労働協約に別段の定めがある場合(通勤定期券等)
Ⅱ.賃金を労働者の同意を得て、労働者の銀行口座への振込を行う場合
Ⅲ.退職手当を労働者の同意を得て、労働者の銀行口座への振込、小切手の振り出し、郵便為替で支払う場合
② 直接払いの原則
賃金は直接本人に支払わなければならず、債権者などの代理人に支払うことは違法となります。ただし、以下の例外を除きます。
Ⅰ.使者への支払(病気中に家族に取りに行かせること)
Ⅱ.裁判所や税務署など行政官庁による差押の場合
③ 全額払いの原則
賃金はその全額を支払う義務があります。ただし、以下の例外を除きます。
Ⅰ.法令に別段の定めがある場合(所得税の源泉徴収、社会保険料等の源泉控除)
Ⅱ.当該事業場に労使協定がある場合(購買代金、組合費等の控除)
④ 毎月1回以上払いの原則
賃金は毎月1回以上支払わなければなりません。年俸制であっても、最低でも12回に分けて支払う必要があります。なお、臨時に支払われる賃金、賞与は例外として扱われます。
⑤ 一定期日払いの原則
賃金は毎月1回以上の一定の期日に支払わなければなりません。
月給であれば、25日払いとか末日払いといった期日でなければならず、「毎月第2金曜日」では一定期日ではなく認められません。
法定労働時間は、特例を除き1週間40時間、1日8時間と定められています。ただし、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で、従業員数が10人未満の事業所は、1週間の法定労働時間が44時間と規定されています。これらの事業所を、特例措置対象事業所といいます。
所定労働時間は、就業規則や労働契約で定めている労働時間をいいます。原則として、法定労働時間の範囲で定めます。
休憩時間は、労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保障された時間をいいます。労働時間の長さに応じて、休憩時間の最低時間が決められています。
労働時間 | 休憩時間 |
8時間超 | 少なくとも1時間 |
6時間超8時間以下 | 少なくとも45分 |
6時間以下 | 与えなくてもよい |
また、特定の業種(運送、販売、理容、金融保険、映画製作、演劇、郵便、信書便、電気通信、病院等、保健衛生、旅館、接客娯楽、官公署)は除いて休憩時間は一斉に与える必要があります。さらに、警察官、消防職員等を除いて、休憩時間は自由に利用させなければなりません。
使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回(曜日はいつでも構いません。)または、4週間(28日)を通じて4日以上与えなければなりません。
変形労働時間制は、1か月のうちに業務の繁閑がある場合、週休2日制を導入できない場合に導入される制度です。
1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間以内(特例措置対象事業場は44時間)となるように、労働日および労働日ごとの労働時間を設定することにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりすることが可能になる制度をいいます。そのため、ある週は1週間あたりの労働時間が40時間を超えているが、別の週は1週間あたりの労働時間が40時間以下となることがあります。
1か月単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定または就業規則等で以下の事項をすべて定める必要がございます。
① 対象労働者の範囲
法律上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。
② 対象期間および起算日
対象期間および起算日は、具体的に定める必要があります。なお、対象期間は、1か月以内の期間に限ります。
③ 労働日および労働日ごとの労働時間
シフト表や会社カレンダーなどで、②の対象期間すべての労働日ごとの労働時間(始業時刻、終業時刻)をあらかじめ具体的に定める必要があります。その際、②の対象期間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えないよう設定しなければなりません。なお、あらかじめ決めた労働日または労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。
④ 労使協定の有効期間
労使協定を定める場合、労使協定そのものの有効期間は②の対象期間より長い期間とする必要があります。
なお、締結した労使協定や作成、変更した就業規則は、所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。
1年単位の変形労働時間制は、季節的に忙しい時期が決まっているなど1年のうちに業務の繁閑がある場合や週休2日制を実施できない場合に導入される制度です。
1年単位の変形労働時間制は、1か月を超え1年以内の期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間以内となるようにする制度です。ただし、1年単位の変形労働時間制については1か月単位の変形労働時間制と違い特例措置対象事業場においても週40時間にする必要があります。
1年単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定または就業規則等で1か月単位の変形労働時間制で述べた①~④の事項に加え、特定期間(対象期間の中でも特に業務が繁忙な期間)を定める必要があります。
フレックスタイム制とは、1か月以内の一定期間(清算期間)において、労働者が各日の始業および終業の時刻を自主的に決定し働くことができる制度です。制度を導入するためには、始業および終業の時刻をその労働者の決定にゆだねる旨を就業規則等において定める以外に、労使協定で以下の事項をすべて定める必要がございます。
① 対象労働者の範囲
法律上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。
② 清算期間および起算日
清算期間および起算日は、具体的に定める必要があります。なお、清算期間は、1か月以内の期間に限ります。
③ 清算期間における総労働時間
清算期間における総労働時間とは、フレックスタイム制において、労働契約上労働者が清算期間内において労働すべき時間として定められている時間のことで、いわゆる所定労働時間のことです。
この時間は、清算期間を平均し、1週間の労働時間が
40 時間(特例措置対象事業場は、44時間)以内になるように定める必要があります。そのためには、次の条件式をみたす必要があります。
清算期間における総労働時間≦1週間の法定労働時間×清算期間の暦日数÷7 |
④ 標準となる1日の労働時間
標準となる1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際にこれを何時間労働したものとして賃金を計算するのか、明確にしておくためのものであり、時間数を定めることで足りるものです。
⑤ コアタイム
コアタイムは、労働者が1日のうちで必ず勤務すべき時間帯です。必ず設けなければならないものではありませんが、これを設ける時は、その時間帯の開始及び終了の時刻を明記する必要があります。
⑥ フレキシブルタイム
フレキシブルタイムは、その時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯です。コアタイム同様、必ず設けなければならないものではありませんが、これを設ける時は、その時間帯の開始及び終了の時刻を明記する必要があります。
変形労働時間制と違い、締結した労使協定は所轄労働基準監督署に届け出る必要がありません。
時間外労働とは、1日または1週間の法定労働時間を超えて働くことをいいます。休日労働は、法定休日に働くことをいいます。時間外や法定休日に労働させる場合は、労働基準監督署に36協定(労使協定)を提出する必要があります。36協定で36が使われるのは、労働基準法第36条に時間外労働及び休日労働についての基準が定められているからです。使用者が36協定をする場合は、以下の事項について協定しなければなりません。
① 時間外労働または休日労働をさせる必要のある具体的な事由
② 業務の種類
③ 労働者の数
④ 1日および1日を超える一定期間について延長することができる時間
⑤ 有効期間
時間外労働には表に示す限度時間が設けられています。
期間 |
限度時間(単位:時間) | |
一般(右以外) | 1年単位の変形労働時間制の場合 | |
1週間 | 15 | 14 |
2週間 | 27 |
25 |
4週間 | 43 | 40 |
1か月 | 45 | 42 |
2か月 | 81 | 75 |
3か月 | 120 | 110 |
1年間 | 360 | 320 |
ただし、1日については限度基準が定められていません。
時間外労働には限度時間がありますが、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合に、特別条項付き36協定を結ぶことにより、限度時間を超えて時間外労働をすることができます。特別条項付き36協定を結ぶ場合には、以下の事項について協定しなければなりません。
① 原則としての延長時間(限度時間以内の時間)
② 限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情
③ 一定期間途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続
④ 限度時間を超える一定の時間
⑤ 限度時間を超えることができる回数
1日8時間または1週間40時間を超えて働く場合、法定休日に働く場合、過重な労働に対する労働者への補償のため、時間外については2割5分以上、休日については3割5分以上割増賃金を支払う必要があります。22時から5時までの深夜時間帯に働いた場合については、さらに2割5分を加え、時間外が深夜に及ぶようであれば5割(=2割5分+2割5分)、休日の時間外が深夜に及ぶようであれば6割(=3割5分+2割5分)の割増賃金を支払う必要があります。また、1か月あたり60時間を超える時間外労働を行う場合は、5割以上の割増賃金を支払う必要があります。割増率について表にまとめると、
労働 | 割増率 |
時間外 | 2割5分以上 |
休日 | 3割5分以上 |
時間外(月60時間超) | 5割以上 |
深夜 | 2割5分以上 |
時間外+深夜 | 5割(=2割5分+2割5分)以上 |
時間外(月60時間超)+深夜 | 7割5分(=5割+2割5分)以上 |
時間外(月60時間超)+深夜 | 6割(=3割5分+2割5分)以上 |
時間外+休日 | 3割5分以上 |
1か月60時間を超える時間外労働の割増率については、一定の中小企業は猶予されます。猶予される中小企業は、表の通りです。
業種 | 常時使用労働者数 | 資本金または出資の金額 |
小売業 | 50人以下 | 5,000万円以下 |
サービス業 | 100人以下 | 5,000万円以下 |
卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
その他 | 300人以下 | 3億円以下 |
1か月60時間を超える時間外労働を行った場合、割増賃金の支払いに代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(代替休暇)の付与による補償を行なうことも可能となっています。ただし、この場合には労使協定を締結する必要があります。
割増賃金の計算の基礎となる賃金は、原則として通常の労働時間または労働日の賃金のことであり、すなわち所定内労働時間内に働いた場合に支払われる賃金です。
ただし、以下のものは割増賃金の計算の基礎となる賃金からは除外します。
① 家族手当
② 通勤手当
③ 別居手当
④ 子女教育手当
⑤ 住宅手当
⑥ 臨時に支払われた賃金
⑦ 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
年次有給休暇は、労働者が労働の義務がない日(休日)以外にある程度まとまった日数を労働から解放し、これを有給とすることで身体および精神的な休養がとれるよう法律が保障した休暇のことをいいます。年次有給休暇は、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、その6か月間の全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続勤務の期間に応じて表に示す日数の年次有給休暇を付与しなければなりません。
継続勤務期間 |
6か月 |
1年 6か月 |
2年 6か月 |
3年 6か月 |
4年 6か月 |
5年 6か月 |
6年 6か月 以上 |
付与日数 | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
ここでいう全労働日とは、就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいいます。以下に、年次有給休暇の計算に使用される全労働日に含まれるもの(労働義務のある日)、含まれないもの(労働義務のない日)について表にまとめます。
含まれるもの | 含まれないもの | ||
出勤日 | 欠勤した日 |
|
|
実際に出勤した日 | 欠勤したが出勤日に含める日 | ||
|
|
|
年次有給休暇を取得する日は、労働者が指定することによって決まり、使用者は指定された日に年次有給休暇を与えなければなりません。
ただし、労働者の指定した日に年次有給休暇を与えると、事業の正常な運営が妨げられる場合は、使用者に休暇日を変更する権利(時季変更権)が認められています。
年次有給休暇については、5日は個人が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければなりません。表に示した付与日数から5を引いた日数分(例:付与日数が20日の場合は、20-5=15日分)については、労使協定の締結を条件に使用者は計画的に年次有給休暇を与えることができます。
年次有給休暇の時効は、2年となります。
パートタイム労働者など短時間労働者の年次有給休暇については、以下に示すいずれの条件にも当てはまる労働者については、通常の労働者と異なり比例付与の対象となります。
① 週の所定労働日数が4日以下の場合(週以外の期間で所定労働日数が定められている場合は1年間の所定労働日数が216日以下の場合)
② 週の所定労働時間が30時間未満の場合
短時間労働者も含めた労働者の年次有給休暇の付与日数は、表の通りとなります。
週所定労働日数 |
年間所定 労働日数 |
継続勤務期間 | ||||||
6ヶ月 |
1年 6か月 |
2年 6か月 |
3年 6か月 |
4年 6か月 |
5年 6か月 |
6年 6か月 以上 |
||
5日 | 217日~ |
10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
4日 | 169~216日 |
7 | 8 | 9 | 20 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121~168日 | 5 | 6 | 9 | 8 | 9 | 10 | 11 |
2日 | 73~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
1日 | 48~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
就業規則は、労働時間や賃金等の基本的な労働条件や職場の服務規律を定め、使用者、労働者が守るべきルールを定めたもので、よく「会社の法律」や「従業員との契約書」などといわれます。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成する義務を負い、作成または変更した就業規則を所轄労働基準監督署長に届け出る義務があります。労働者の数を数えるにあたっては、正社員、パートタイム、アルバイトすべての人数を数えます。届出を行うにあたっては、労働組合など労働者を代表する者の意見を聴いて、その意見を記した書面を添付する必要があります。
就業規則は所轄労働基準監督署長に届けるだけでは効力は発生せず、労働者に周知させることによって初めて効力が発生します。周知は、以下の3つの方法のいずれかにより行います。
① 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けること
② 書面を労働者に交付すること
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、
各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
ここでいう作業場とは、ここの事業場を指します。
就業規則に記載すべき事項は、必ず記載しなければならないとされる絶対的必要記載事項、定めをする場合には記載しなければならない相対的必要記載事項があります。また、実際に就業規則を作成する際には、これらの事項以外に、福利厚生など記載をするかどうかは自由である任意記載事項も併せて記載します。
絶対的必要記載事項は、表の通りとなります。
労働時間関係 |
①始業・終業の時刻 ②休憩時間(その長さ、考え方) ③休日(その長さ、考え方) ④休暇(代替休暇、年次有給休暇、産前産後休暇、結婚休暇など) ⑤交代制労働における就業時転換に関する事項(交代期日、交代順序など) |
労働時間関係 |
①賃金(臨時の賃金を除く。)の決定、計算方法 ②賃金の支払方法 ③賃金の締切、支払時期 ④昇給に関する事項 |
退職関係 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む。) |
相対的必要記載事項は、表の通りとなります。
賃金関係 | ①退職手当に関する事項 ②臨時の賃金等(退職手当を除く。)および最低賃金額に関する事項 |
その他 |
①労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項 ②安全・衛生に関する事項 ③職業訓練に関する事項 ④災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項 ⑤表彰・制裁に関する事項 ⑥その他当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項 |
任意記載事項は、絶対的必要記載事項および相対的必要記載事項以外の事項で、就業規則に記載することが義務づけられていない事項で、経営理念、社是、社訓、慶弔規定や貸与住宅、貸付金制度などの福利厚生に関する事項などがこれに該当します。
解雇のことを説明する前に、労働契約の終了についてまとめる必要があります。労働契約の終了の事由についてまとめると表に示すようになります。
事由 | 内容 |
合意解約 | 労働者と使用者が合意によって労働契約を解約すること |
辞職 (自己都合) |
労働者による労働契約の解除(労働者が、自らの意思に基づいて一方的に退職すること) |
定年 | 労働者が一定の年齢に達したときに労働契約が終了すること |
期間満了 | 労働契約に期間の定めがある場合に、その期間が満了したこと |
解雇 | 使用者が労働契約を一方的に解除すること |
解雇については、以下の3つの類型があります。
① 普通解雇
整理解雇、懲戒解雇以外の解雇をいい労働契約の継続が困難な場合に行います。普通解雇が有効となるには、一般的に次の要件を満たす必要があります。
普通解雇を行う場合の例としては、次のものが挙げられます。
▪ 勤務成績が著しく悪く、指導を行っても改善の見込みがないとき
▪ 健康上の理由で、長期にわたり職場復帰が見込めないとき
▪
著しく協調性に欠けるため業務に支障を生じさせ、改善の見込みがないとき
② 整理解雇
会社の経営悪化により人員整理を行うための解雇をいい、次の4要件をいずれも満たす必要があります。
Ⅰ.人員整理を行う合理性があること(経営不振等)
Ⅱ.解雇回避のために最大限の努力(配転、出向、希望退職の募集等)を行ったこと
Ⅲ.解雇すべき人員の選定、運用に合理性があること
Ⅳ.使用者が労働者に対し十分な説明をし、誠意を持って交渉を行うこと
③ 懲戒解雇
従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに懲戒処分として行うための解雇をいいます。就業規則や労働契約書にその要件を具体的に明示しておくことが必要となります。
解雇は使用者からの一方的なもののため、会社の勝手なときに行えるものではなく客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当の理由がある場合でなければ解雇は行えません。
まず、労働基準法においては以下の期間においては解雇をしてはならないと、制限が設けられています。
① 労働者が業務上負傷または疾患で休業する期間およびその後30日間
② 産前産後休業期間およびその後30日間
上記の解雇制限期間中であっても以下の場合は、解雇が可能となります。
① 業務上の傷病の場合において、打切補償として平均賃金の1,200日分を支払う、もしくは労災保険の傷病補償年金を受ける場合
② 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
天災事変その他やむを得ない場合は、所轄労働基準監督署長の認定を受ける必要があります
その他に、解雇を禁止するものとしては、男女雇用機会均等法に定められる性別を理由とした解雇、妊娠、出産、育児休暇、介護休暇を理由とした解雇、労働組合法に定められた労働組合員であることや労働組合の正当な活動を行ったことによる解雇、労働基準法に定められた労働基準法違反などについて労働基準監督署等へ申告したことを理由とする解雇などがあります。
労働者を解雇する場合には、原則として少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないとしています。
予告日数については、平均賃金を支払った分の日数だけ短縮することができます。