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労働者を1人でも雇えば、労働保険(労災保険および雇用保険)が適用されます。一般的な一元適用事業(労災保険および雇用保険の保険料の申告、納付等に関して、両保険を一元的に取扱う事業)の加入手続は以下で説明します。
まず、次の書類を、管轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
① 労働保険関係成立届
② 労働保険概算保険料申告書
その後、次の書類を管轄の公共職業安定所(ハローワーク)に提出する必要があります。
① 労働保険関係成立届(労働基準監督署の受理印が押印された事業主控)
② 雇用保険適用事業所設置届
③ 雇用保険被保険者資格取得届
④ 登記事項証明書(法人の場合)または事業主世帯全員の住民票写し(個人事業主の場合)
⑤ 事業所の実在を確認できる書類
(1) 自社または事業主所有家屋…不動産登記事項証明書または公共料金請求書・領収
(2) 賃貸家屋…賃貸借契約書
⑥ 事業実態が確認できる書類(営業許可書、工事請負契約書など)
⑦ 労働者の雇用実態、賃金の支払の状況等を証明できる次の書類
(1) 労働者名簿
(2) 賃金台帳(雇入れから現在まで)
(3) 出勤簿またはタイムカード(雇入れから現在まで)
(4) 雇用契約書(有期契約労働者の場合)
雇用保険の被保険者が離職した場合は、離職日の翌日から10日以内に以下の書類を公共職業安定所に提出します。
① 雇用保険被保険者資格喪失届
② 雇用保険被保険者離職証明書(離職票ともいいます。)
雇用保険被保険者離職証明書は3枚綴りになっており、公共職業安定所での手続後2枚目にある雇用保険被保険者離職票-1と3枚目にある雇用保険被保険者離職票-2が発行され本人に会社から送られます。
労働保険料を計算する上での賃金に該当するものは、以下の通りです。
① 基本給・固定給等基本賃金
② 超過勤務手当・深夜手当・休日手当等
③ 扶養手当・子供手当・家族手当等
④ 日直・宿直手当
⑤ 役職手当・管理職手当等
⑥ 地域手当
⑦ 住宅手当
⑧ 教育手当
⑨ 単身赴任手当
⑩ 技能手当
⑪ 特殊作業手当
⑫ 奨励手当
⑬ 物価手当
⑭ 調整手当
⑮ 賞与
⑯ 通勤手当
⑰ 定期券・回数券等
⑱ 休業手当
⑲ 雇用保険料その他社会保険料(労働者の負担分を事業主が負担する場合)
⑳ 住居の利益(社宅等の貸与を受けない者に対し均衡上住宅手当を支給する場合)
㉑ いわゆる前払い退職金(労働者が在職中に、退職金相当額の全部又は一部を給与や賞与に上乗せするなど前払いされるもの)
労働保険料は、事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額に、その事業の労災保険料と雇用保険を合計した率を乗じて計算します。
① 労災保険と雇用保険の両方の保険関係が成立している場合
労働保険料=賃金総額×(労災保険率+雇用保険率)
② 労災保険のみ保険関係が成立している場合
労働保険料=賃金総額×労災保険率
③ 雇用保険のみ保険関係が成立している場合
労働保険料=賃金総額×雇用保険率
労災保険率は、事業の種類ごとに2.5/1000から89/1000の範囲内で定められています。
また、雇用保険率は、以下の表の通りとなります。
雇用保険率 | 二事業 |
失業等給付および 就職支援法事業 |
|||
事業主負担分 |
被保険者 負担分 |
||||
一般の事業 |
9.0/1000 | 3.0/1000 | 3.0/1000 | 3.0/1000 | |
特掲 事業 |
農林水産業 清酒製造業 |
11.0/1000 | 3.0/1000 | 4.0/1000 | 4.0/1000 |
建設の事業 | 12.0/1000 | 4.0/1000 | 4.0/1000 | 4.0/1000 |
後で述べる年度更新で、石綿による健康被害者の救済による法律により、石綿(アスベスト)健康被害者の救済に充てるための一般拠出金と労働保険料を一緒に納付します。
一般拠出金は、賃金総額に0.02/1000を乗じて計算した金額となります。
労働保険の保険料は、毎年4月1日~翌年3月31日の1年間を単位として計算します。労働保険料の申告は、6月1日~7月10日に新年度の概算保険料と、前年度で支払った概算保険料と前年度に支払った賃金をもとに計算した確定保険料の過不足について精算した金額について合わせて申告を行い、保険料の納付を行います。これを年度更新といいます。
手続が遅れますと、政府が保険料・拠出金の額を決定し、さらに追徴金(納付すべき保険料・拠出金の10%)を課すことがあります。また、延滞金も徴収されます。
延滞金は、政府より労働保険料の納付の督促をうけ、督促状に指定された期限までにこれを納付しないときに、法定納期限の翌日からその完納又は財産差押えの日の前日までの日数により計算し徴収されます(年14.6%の率)。納期限から2か月については、「7.3%」と「前年の11月30日において日本銀行が定める期準割引率+4%」のいずれか低い割合です。
納付すべき概算保険料が40万円(労災保険または雇用保険のいずれか一方の保険関係のみが成立している事業については20万円)以上の場合には、申請により延納することができます。
延納する場合の納付期限は、以下の通りです。
第1期分…7月10日
第2期分…10月31日
第3期分…1月31日
納付期限が、土曜日、日曜日、祝日にあたる場合は、翌日となります。
年度の初日(4月1日)に満64歳以上の被保険者は、事業主負担分および被保険者負担分とも雇用保険料が免除されます。65歳に達した日以後に新たに雇用される人は、雇用保険に加入できないこととなっていましたが、平成29年1月1日から法律が改正され、65歳以上の方でも新規に雇用保険に加入できることとなりましたので、注意していただきたく思います。